Thursday, October 14, 2010

Derusu Uzala

(1975)

ロシアでの撮影。
黒澤作品の異文化への翻訳?
一様に黒澤作品と言っても少し趣向がちがう。
けれど、美への追求のストイックさはいつも通りだと私は思った。

カラーであるという点が唯一、もったいない。
鮮やかな色合いの映像に慣れた眼で観ると、色あせたという印象。

しかし、構図など様々なシーンに完璧主義が垣間見える。
息をのむような映像もちゃんとある。
?なシーンもいくつかあったけれど。
白黒で撮影されたものを観たかったなと思ってしまう。

カラーでなければ表現できない美はないのではないかと思う。
弾けるような色鮮やかな自然を一度でも見たことがある人間ならば、
白黒の黒澤作品から、その美しさを何倍も観ることができるのではないか。

月と太陽が同時に映るシーンが制作者のロマンティシズムを反映している。
少女マンガばりのロマンティストなんじゃないかな。
凍った湖と集めたすすき(?)で作られた家
手早く描かれたその家のスケッチが不思議な美しさだった。

せめて良かれと思って渡した最新式の銃が仇となる。
ただ、彼の視力に異常が現れた時からデルスの運命は決まっていた。
街の四角い箱の中に住むことはできないけれど、
山に戻って、厳しい自然の中で生き残ることのできる可能性もない。

虎を撃ったデルスの落ち込み様。
彼の心の平安を保っているものは、自然への信仰。
山の神が、山に彼の居場所がなくなったのだと伝えに来たのだというデルス。
なんて厳しい世界なんだろう。

近代化への疑問を投げかけ、自然の中で暮らすことや昔ながらの価値観に対する憧れが強い。
と同時に、その生活に伴う厳しさと残酷さを無視することはできない。
しかし、最後にデルスの命を奪ったのは、自然でも、彼の信仰する神でもなく、
街に住む人間であったという事実が全編を通して描かれる理想主義を現実に引き戻している。
また、こんなに賢明なデルスの家族はpoxによって死に絶えている。

銃を撃っては行けない。
テントを立てて住んでもいけない。
と言われたときのデルスの表情。

壊れない男の友情は観ていて美しい。
キャピタンの命を何度も救ったデルス。
彼にとっては当然のことで、自分がとの気負いもない。
He can care about the people even he has never met before.
and the poople who he will never meet in the future.
そんな生き方と価値観に憧れているんだ。
最初の二人の別れのシーン

キャピタンの家に到着したデルスは、
現代にある自分の生活を捨てて、離れて住んでいる息子と暮らし始めた老親に見える。
子どもとの交流を楽しむ以外にできることもない。
それまでの生き生きとした様子から、すっかり老け込んだデルス。

価値観の明らかな違い。
いつも風にさらされ、不安定な布で守られる厳しい自然の中の空間に対して
頑丈な壁に囲まれて暖炉のちろちろとした火を前に座り込むデルス。
この生活を捨てて、テントに戻りたいのか。

それはそうと私は、
すっかり映画の主張する価値観に引き込まれ、
デルスが大好きになりました。
いつもながら、中年〜老年男性が主人公の物語に弱い。

http://www.wochikochi.jp/topstory/2011/01/kurosawa.php