(1929) 小林多喜二
プロレタリア文学との分類
マンガ版が出て話題になって、小説から読んだ後に斜め読みしたマンガ。
改めて実感したのが、語りの力ってすごい。
確かに視覚的にしか想起させられないインパクトや効果は存在する。
しかし、人間の想像力に勝るものはないのではないだろうか。
この小説は悲惨な話を、容赦なく悲惨に描いている。
そこから造り上げたイメージというのは暗くて救い様のない悲惨なものだった。
しかし、漫画の描写も悲惨さを描いているけれど、
私は目のキラキラしたヒーローが出てきてどうしても違和感を覚えた。
漫画化されることで、大間かなメッセージは伝われどインパクトが足りない。
そんな印象だった。
人間の想像力と、それを喚起する文章の力。
蟹工船という、人間の権利も尊厳も存在しない場所で働かされる労働者。
人というものは「他人」にどこまでも残酷になれるのだ。
階級闘争。
搾取される集団が本当なら当然の扱いを受けるために
どれほどの困難に立ち向かわなければならないのか。
大義のために働く、という考え方はどこまで通用するのか。
この話は、実際に起こった様々な事件の報道内容に基づいているという。
日本社会、全ての国の発展は、このような現実の上に成り立っている。
ストライキをする権利、声をあげる権利がどれほど大切で、また難しいのか。