Tuesday, June 2, 2009

Karamazovi


(2008) Czech
Directed by Petr Zelenka.
With Martin Mysicka.
       
EUフィルムデーズ2009
カラマーゾフ兄弟HP
           
ポーランドの鉄工所を舞台にしたオルタナティブ・フェスティバル(演劇祭)。
観客の生活の場に芸術を組み込むことで、身近に感じてもらおうというプロジェクトは、
教養ある企画者が考えそうなこと。
しかし、あくまで生活の場であるその場所では何が起こるか分からない。
そして、その場所で起こったことは、全てが現実。
         
なぜ、子どもがその場にいたのかはわからないけれども、
「こんな企画さえはじめなければ。」という台詞からも、何か関わりがあったんだろう。
         
芸術を広く市民に、と上が言ったところで、その効果は実際に試してみるまで分からない。
子どもを亡くした父親は、日常に突然入り込んできた演劇を、真摯に受け止めた。
もしかすると、これが、彼の初めて観る演劇だったのかもしれない。
現実と、芝居の差があいまいになる空間。
         
暗い鉄工所の中、吊るされた鉤と、飛び散る火花が地獄を連想させる。
その中でも、ステンドグラスから入るほのかな光。
緑溢れる庭が現実世界に引き戻してくれるけれど、境はあくまであいまいなまま。
         
工場のガレージが開いて、影絵のように役者が並ぶシーンが印象的だった。
悲しみを背負った黒髪の女の人が、賛美歌で劇を終えるのは、それでも消えない希望なのかな。