(2008) Czech
Directed by Petr Zelenka.
With Martin Mysicka.
EUフィルムデーズ2009
カラマーゾフ兄弟HP
ポーランドの鉄工所を舞台にしたオルタナティブ・フェスティバル(演劇祭)。
観客の生活の場に芸術を組み込むことで、身近に感じてもらおうというプロジェクトは、
教養ある企画者が考えそうなこと。
しかし、あくまで生活の場であるその場所では何が起こるか分からない。
そして、その場所で起こったことは、全てが現実。
なぜ、子どもがその場にいたのかはわからないけれども、
「こんな企画さえはじめなければ。」という台詞からも、何か関わりがあったんだろう。
芸術を広く市民に、と上が言ったところで、その効果は実際に試してみるまで分からない。
子どもを亡くした父親は、日常に突然入り込んできた演劇を、真摯に受け止めた。
もしかすると、これが、彼の初めて観る演劇だったのかもしれない。
現実と、芝居の差があいまいになる空間。
暗い鉄工所の中、吊るされた鉤と、飛び散る火花が地獄を連想させる。
その中でも、ステンドグラスから入るほのかな光。
緑溢れる庭が現実世界に引き戻してくれるけれど、境はあくまであいまいなまま。
工場のガレージが開いて、影絵のように役者が並ぶシーンが印象的だった。
悲しみを背負った黒髪の女の人が、賛美歌で劇を終えるのは、それでも消えない希望なのかな。