Directed by Hugh Hudson.
With Nicholas Farrell, Nigel Havers, Ian Charleson.
伝統と技術が対立する時代のイギリスの若者たちの話。
一人は神のために、もう一人は自分自身と民族のために。
中国という異国の地に生まれ育ったが、
家族と血統により自然にイギリス人と認められる中流階級のエリックに対し、
ケンブリッジ大学進学というエリートココースを歩み、
自分をイギリス人と意識しているにも関わらず、
名前がユダヤ人である故に差別を受けるアブラハム。
一人は、走ることを自らの武器とし、
もう一人は、走ることを神への献身と認識する。
自分の持つ理念を疑わず、真摯に前に向かう二人。
ナショナリズムの要素は、アブラハムが自分のためだけでなく、
自分の民族のために走ったという点にも表れているのではないか。
それに対し、自らも、周りもスコットランド人と認めるエリックが、
自分の国の王子に頼まれても日曜の出場を拒んだのには、
宗教が彼にとってのプライオリティーであったという要素だけでなく、
イギリス人⇔スコットランド人という差もあるのではないか。
良き伝統を代表するアンディーは才能に溢れ、かつ努力もする。
ただ、シャンパンを置いての練習が何を表すのかが分からなかったけれど。
悪しき伝統を表すケンブリッジの教授たち。
アマチュア理念を掲げ、努力を個人の欲望と見なす。
紳士として負けるべきだと。
マージナルの位置にあるコーチとアブラハムの関係。
自らのペンダントを渡し、息子よ、と呼ぶのは周縁の者という二人の立場。
そして、技術に支配され、ある意味悪役の位置にあったアメリカ。
お揃いのスエットに、胸には国旗、機械的な動きで成果はあげるが、
本質的な何かが足りないと顕著に表れている。
オリンピック後、帽子のふたが抜けるシーンは、
宗教、民族の壁を超えたことを表しているのかな。
St Andrewsのシーンが美しい。
West Sand