(1979)
Directed by Francis Ford Coppola.
With Marlon Brando, Martin Sheen, Robert Duvall.
「地獄の黙示録」「闇の奥」
"Heart of Darkness"を基にしてベトナム戦争の残酷さ、非人道的な姿を描く。
現実ではないとしても現実だったかもしれない。
サーフィンをするために村を焼き払う隊長。
死んだ敵の体の上にDeath cardを無造作に投げ落とす。
重傷の敵に同情心を見せたかと思うと次の瞬間にはサーフィンの話をしている。
戦争が、彼にとってはゲームの一つとしか捉えられていない。
鬼ではなく部下にも人気のある一人の人間。
銃弾の飛び交う中、恐れないと立ち上がった姿は狂気の中以外の何者でもない。
被害者は直接の攻撃対象とされた人々だけでない。
優位に立って無感覚に攻撃をしているように見えるアメリカ軍の兵士にも及ぶ。
自分が生きてきた価値とはあまりに切り離された世界に連れてこられた青年たちが次第に精神を病んでいく。
悲惨な状況を見たウィラードの頭に浮かぶ疑問。
カーツは何の罪を犯したのか。
このような殺人が堂々と認められているこの場所で、何をもって殺人罪と呼ぶのか。
ここでも人の命が平等に価値あるものではなく、社会の、そして個人の判断に委ねられている。
ジャングルの中に立てられたぎらぎらとしたステージのプレイガールを取り囲む迷彩色の服を着た集団。
それを柵の外の闇から見つめるベトナム人。
華やかな『文化』を発展させたアメリカの成れの果て。
自分はコックになりたかったのだと嘆くchef
虎との遭遇で、ボートから決して出てはいけないとヒステリックに繰り返す。
罪のないベトナム人の一家が、狂気の銃弾によって倒れる。
子犬を思っただけなのに、命を落とした少女。
無表情にとどめを刺すウィラード。
ボートの中の力関係が崩れかかり、極限状態によって判断を狂わせていく兵士たち。
ベトナム戦争のことなど何も知らないサーファーのlanceが子犬を庇い戦場を見つめる姿は無邪気にも見える。
顔を緑色に塗り、これでカモフラージュができると言い、子どもに戻ったように見える。
軍部の指令を無視し、密林の中に自分の王国を作ったカーツ。
Heart of Darknessでは、彼は象牙に取り憑かれていた。
ここで彼が求めていたものは何だったのか。
彼の王国は、無惨な死体が転がっており、明らかに暴力から無関係な世界ではないのに、そこに人々が求めたものは何だったのか。
力での支配が行われていたとしても、あの様にカーツが慕われていたのはなぜ?
この王国では、犠牲者の姿が露になった隠喩?
実際にはこのように犠牲になっている人間がおり、その上で権力が成り立っている。
それが巧く隠されているだけである、と言いたいのかな。
自分の死を感じたカーツは遺言めいた言葉をウィラードに残す。
自分が死んだら、息子に自分が行ってきたことを伝えて欲しいと。
そして、彼には自分を殺す権利はあっても、人殺しと呼ぶことも、自分をjudgeすることもできないと。
Horror, horror.
カーツが見た地獄は、単にこの非人道的な経験を指すのかがよくわからない。
アメリカ軍が予防接種を行った子どもたちの腕を切り落とした解放軍。
信仰や信念もまた狂気となる。
敵ですらない人間を傷つけるその責任はどこへ?
そして、その状況を作り出すのが戦争。
それがここで言われている地獄の一部であるとしてもそれだけではない。
生け贄の水牛とカーツの暗殺が同時に映し出される。
カーツ王国はウィラードを王として迎え、武器を捨てたのか。
しかしここで武器を捨てたことはベトナム戦争自体とは何の関係もない。
だとしたら虚偽の世界を捨てた?不平等な社会構成を?